ヨーロッパ:自転車シフト
最近、うちの近所の自転車屋さんが、大変な盛況である。
札幌に住む私も、4月に電動自転車を買った。
電車に乗るのは感染が怖いし、自転車があれば、外出制限中にも少し遠くの公園まで、子供と行くことができた。
イタリア、ベルギー、フランス、ギリシャ、アイルランド、イギリスなど、ヨーロッパ各国では、自転車を買うための補助金を出したり、自転車道を整備したりしているようだ。
イタリア政府も、自転車を購入した人に、費用の60%を、最大500ユーロ(約6万円)まで補助する。
ということで、イタリア語のニュースを見てみると、自転車だけでなく、キックボードも補助の対象になっていた。

これは、筆者の描いたキックボードに乗るヴェネチアの男の子の絵である。
ヴェネチアでは、車もないが、自転車もない。
その代わり、早く移動したい人や子供たちが乗るのが、キックボード(monopattino)である。
その他にも、ガソリンが出なければ、電動自転車、ホバーボード、セグウェイも対象となる。
日本でセグウェイに乗っている人を見たことがないが、フィレンツェなどのイタリアの都市では、街中でよく見かける。
http://t.co/pIZW9vlTU2#newyork #nyc #segway #florence #firenze #florence #dogs #gothamist #dynamowheelsflorence pic.twitter.com/iPcsYyb4tu — Segway DynamoWheels (@DynamoWheels) April 1, 2015
自転車シフトの目的
まず一つの理由は、コロナ対策として、公共交通機関での密集を避けるためである。
二つ目は、大気汚染の改善とCO2の削減である。
そして三つ目は、肥満の予防だという。
二つ目の大気汚染については、大気汚染がコロナウイルスでの死亡率を上げる要因となったとも言われている。
そのようなことから、政府の汚染対策に対する、市民の理解が得られやすくなったという。
下の記事では、ロックダウン中に二酸化窒素の減少していく様子が、衛星写真から見てとれる。
In one month, there is a clear decrease of NO2 levels (a pollution marker) in northern #Italy according to the satellite sensor @tropomi @avoiland @elisa_ox @blefer @rjswap pic.twitter.com/FnSz4AtT8q — Santiago Gassó (@SanGasso) March 11, 2020
しかし、ヴェネチアでは、車は一台も走っていないにも関わらず、大気汚染は深刻だ。
隣町の工業地帯からの工場からの排気や、観光客を乗せた大型船からの排気が主な原因である。
ニュースで今日はスモッグが酷いと伝えられれば、夏でも窓を閉めなければならなかったし、工場で爆発などの事故があった時も、窓をしめるよう呼び掛けられた。
自転車へのシフトは素晴らしいが、工場の排気を減らさない限り、大気汚染やCO2の削減は達成できない。
キックボードに乗る、可愛らしい子供たちに、この汚染された空気を吸わせている現状を、早く改善しなければならない。
実現への課題
政府が予算案に入れた、自転車・キックボード購入補助は1億2千ユーロ(約143億円)である。
対象となる購入期間は、5月4日から今年の12月31日まで。
もうすでに買ってしまった人も、領収書と請求書を提出すると、政府から60%(ただし、500ユーロまで)が返金されるという。
しかし、1人の人が平均250ユーロ(約3万円)の申請をしたとして、購入できる台数は48万台であり、とても希望者全員の予算をカバーできないという指摘がある。
また、日本と違って自転車が歩道を走ることはなく、自転車道がなければ、車と同じ道路を走らなければならない。
そのため、自転車の購入費用だけでなく、自転車が走りやすい環境を整備することも課題である。
パリ、アテネ、ダブリンなどで、このような整備計画が進められ、ロンドンでも中心部の一部道路を自動車通行禁止にするという。
きれいな空気の中、自転車も走りやすい、広々とした緑に囲まれた道で、子供たちが笑顔で外を走り回れる日が続きますように。